ニュースの概要

JBpressは、障害のある社員の離職率が30%だった組織が、取り組みを改めて約1%まで下げた事例を取り上げた。民間企業の法定雇用率が2026年4月に2.7%へ引き上がるなか、数字を満たすことだけを目的にせず、組織づくりを見直す契機にできるという趣旨の記事である。採用して終わりにせず、配置や業務の切り出し、上司や同僚との関わり方まで設計し直すことで、定着が大きく変わるという点が焦点になっている。雇用率の引き上げを負担と見るか、働き方全体を点検する機会と見るか。その分かれ目を示す内容といえる。

引用元: 離職率30%から1%へ激減、障害者の「法定雇用率2.7%」を組織改革のチャンスに変えるヒント(JBpress)

分析・見解

離職率30%と1%の差は、採用後の設計で決まる

法定雇用率は2024年4月に2.5%へ、2026年4月に2.7%へ上がった。対象となる企業の範囲も広がり、これまで縁が薄かった中小企業にも数字の問題が及ぶ。

ただし、数字を埋めるだけの採用は、合わない仕事を渡す結果になりやすい。離職率30%とは、10人入社して3人が辞める状態である。1%なら100人で1人だ。この差を本人の努力や運に求めるのは無理があり、受け入れ側の設計の差と見るのが自然だろう。

配慮を善意の個人任せにしない仕組みが定着を左右する

定着する職場は、配慮が特定の優しい上司の善意に頼っていない。担当者が異動したとたんに元へ戻る職場は、また辞める人を出してしまう。仕事の手順を書き出し、指示の出し方や相談先を決め、誰が担当しても同じ対応ができるようにする。

特例子会社で長く働く人が多いのも、専任の支援担当者がいて、業務の切り出しが仕組みとして置かれているからである。同じ発想は、一般の部署にもそのまま移せる。難しい技術は要らない。必要なのは、暗黙の了解を言葉にする手間である。

離職を金額で見ると、改革の優先度が見えてくる

独自の視点として、離職を費用に直してみたい。1人が辞めれば、採用費、教育に使った時間、現場の混乱がまとめて失われる。さらに雇用率が足りなければ、常時100人を超える企業は不足1人につき月5万円、年60万円の納付金を払う。人数を追加で採るより、辞めない仕組みに投資するほうが安く済む場面は多い。

数字の達成だけを見ていると、採用と離職を繰り返す「穴の空いたバケツ」になる。水を注ぎ足す前に、穴をふさぐことが先である。

障害者雇用は、全社の働き方を点検する実験場になる

2024年4月から、週10時間以上20時間未満で働く人も、一定の障害区分で0.5人として数えられるようになった。短時間、在宅、業務の細分化といった選択肢が、制度の上でも認められたわけだ。

こうした工夫は、介護や育児を抱える人、定年後も働く人にも役立つ。障害者雇用で磨いた業務の標準化は、人手不足の時代に組織全体の底力になる。雇用率の引き上げを、そのための点検の機会と捉えられるかが問われている。

ビジネスへの影響

まず自社の離職を数える

障害のある社員の、入社1年以内の離職率を部署別・業務別に出す。多くの企業は雇用率の達成状況は把握していても、離職の中身までは見ていない。辞めた人の配属先、直属の上司、入社後の面談の回数を並べると、偏りが見つかる。偏りが見えれば、どこを直すかが決まる。離職の理由は、退職後ではなく在職中に本人から聞く場を設けたい。

受け入れの型を三つ決める

一つ目は、業務の切り出しである。誰がやっても成果が出る作業を洗い出し、手順書にする。二つ目は、相談の窓口である。直属の上司とは別に、気軽に話せる人を置く。三つ目は、定期面談である。入社後の最初の3か月は月1回以上、体調と業務量を確認する。

配慮の内容は本人と話し合って決め、書面に残す。口頭だけの約束は、担当が替わると消えてしまう。ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどの外部機関は、費用をかけずに使える。

経営会議に出す数字を変える

経営層への報告は、雇用率だけでなく、定着率も加える。不足1人あたり年60万円の納付金と、離職による採用・教育の費用を並べて示すと、投資の判断がしやすい。現場の管理職への研修は、障害の知識よりも「指示の伝え方」に絞ると効果が出やすい。

中小企業は、1人目の採用前に受け入れの型を作ることが近道である。うまくいった配置は社内で共有し、他部署が真似できる形にしておく。それが2.7%を超えて雇用を広げる土台になる。

関連記事