ニュースの概要

ロサンゼルス郡は、自閉症やADHD、ディスレクシアなど脳の働き方に特性を持つ人々の就労を後押しする「Neurodiversity at Work Initiative」を始めた。初回は専門団体のNeuroTalent Worksが25人の候補者を募る。参加者はまず2週間のオンライン就業準備プログラムを受け、その後は給与と福利厚生が付いた最長2年間の育成ポジションに進む。同時に、受け入れる側である郡職員への支援も強化する。単発の採用イベントではなく、準備から就労、定着までを一本の流れとして設計している点が特徴だ。

引用元: ロサンゼルス郡、ニューロダイバーシティ雇用イニシアチブを開始(Los Angeles County)

分析・見解

研修から2年間の有給育成まで一本でつなぐ設計

この取り組みの核心は、採用の「入口」だけでなく、その後の2年間まで含めて制度にしたことにある。多くの企業の多様性施策は、採用説明会や面接の工夫で止まる。ところが発達特性のある人にとって本当に高いハードルは、面接そのものより、入社後の暗黙のルールに慣れるまでの時間にある。

初回の定員は25人と小さい。しかし、2週間の事前準備、有給の育成期間、受け入れ側の支援という三つを組み合わせたことで、小さく始めて検証できる形になっている。大規模に広げる前に、何が効くかを測るための設計だと読める。

なぜ公共機関が先に動くのか

民間企業と違い、自治体には採用方法を公開で説明する責任がある。このため、選考基準を言葉にして整える作業が進みやすい。口頭で伝わっていた業務の進め方を文書にすることは、発達特性のある人だけでなく、すべての新入職員の助けになる。

米国では2010年代からSAPやマイクロソフトが自閉症の人向けの採用枠を設けてきた。ただし対象は主にIT職だった。郡の事務や窓口、現場支援を含む幅広い職種に枠を広げる点が、民間の先行例との違いである。仕事の種類が多いほど、特性と業務の相性を探る選択肢が増える。

外部の専門団体を挟むことの意味

今回、候補者の募集と準備研修を担うのはNeuroTalent Worksという外部団体だ。行政が直接すべてを担わず、当事者の支援に慣れた組織と組むことで、募集の段階から本人が安心して応募できる。

一方で、外部団体への依存には危うさもある。契約が終われば知識が行政内に残らないからだ。そこで重要になるのが、郡職員への支援強化である。管理職や同僚が「どう声をかけるか」「指示をどう書くか」を身につけて初めて、制度が人に依存しなくなる。

独自の視点:配慮は少数のためではなく全員の仕組みになる

私が注目するのは、この仕組みが成功したときの副産物だ。口頭の指示を文書にする、会議の目的を事前に共有する、騒がしい席を避けられるようにする。これらは発達特性のある人のための配慮として始まるが、実際には新人、育児中の人、他国から来た人にも効く。

舗装の段差をなくした歩道が、ベビーカーや車椅子の人まで助ける現象に近い。配慮を特別扱いとして囲い込むと続かない。職場の標準を少し直すものとして位置づければ、費用対効果は大きく変わる。

今後は、2年後の正規職員への移行率と離職率が最も大事な指標になる。研修を終えた人数ではなく、その後に働き続けられた割合で評価されるかどうかが、制度の評価を分けるだろう。

ビジネスへの影響

日本企業が最初に試せる小さな一歩

日本でも障害者雇用促進法のもとで法定雇用率が段階的に引き上げられ、2026年度には民間企業で2.7%となった。数字を満たすだけの採用では、早期離職が起きやすい。LA郡の例から学べるのは、採用前の準備期間と採用後の育成期間を、最初から予算に組み込むことだ。

いきなり全社で始める必要はない。まず一つの部署で、数人規模の有給の実習期間を設けるとよい。期間中に、業務手順の文書化や指示の出し方を見直すことで、受け入れ側の学びも得られる。

受け入れる管理職の負担を減らす仕組みづくり

制度が続くかどうかは、現場の管理職が疲弊しないかにかかっている。指示は短く、書面で、優先順位をつけて出す。相談窓口は上司以外にも置く。こうした基本をまとめた簡単な手引きを、研修と同時に配るだけでも差が出る。

外部の支援機関を使う場合は、契約期間が終わった後も知識が残るよう、社内担当者を一人決めて同席させたい。外部任せにせず、社内にノウハウを蓄える視点が欠かせない。

成果を測る指標を先に決めておく

導入前に、何をもって成功とするかを決めておくことを勧める。参加人数ではなく、育成期間後の継続率、本人の満足度、受け入れ部署の業務改善の件数などが候補になる。数字が見えれば、経営層への説明も、翌年度の予算確保もしやすくなる。

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