米国の障害者就業者663万人、雇用率は高止まり
ニュースの概要
米国労働統計局の10月分の雇用統計をもとにした分析で、16〜64歳の障害者の雇用・人口比率が39.9%となったことが分かった。9月の40.3%からは0.4ポイント下がったが、過去最高に近い水準は保っている。労働力参加率も43.8%から43.3%へ下がった。10月に働いていた障害者は約663万9,000人で、同じ年齢層の就業者全体に占める割合は4.4%だった。分析は、この数字がニューロダイバーシティ(=発達の特性など、脳や神経の多様なあり方を強みとして生かす考え方)に関わる人材の活用が進む流れとも重なると見ている。ただし、一か月の小さな上下をどう読むかには注意が必要だ。
引用元: 米国、障害者の雇用率が過去最高水準を維持(Mirage News)
分析・見解
0.4ポイントの低下は、悪化ではなく誤差の範囲にある
雇用・人口比率とは、働ける年齢の人口のうち、実際に仕事に就いている人の割合である。今回の39.9%は、9月の40.3%より低い。しかし、この統計は家庭への聞き取り調査が土台で、標本の入れ替わりによる揺れが避けられない。障害者は母数が小さいため、全体の数字より振れ幅も大きくなりやすい。
一か月の動きで流れを判断するのは危うい。見るべきは、数年単位で比率が高い位置に定着しているかどうかだ。その意味で、40%前後の水準が続いていること自体が重要な事実である。
就業者の割合が4.4%という数字をどう読むか
障害者が就業者全体に占める割合は4.4%だった。一方で、米国の働く世代には障害のある人がおよそ一割いるとされる。人口に占める割合と就業者に占める割合の差は、まだ働く場への入り口が狭いことを示す。
日本の民間企業の法定雇用率は2026年度から2.7%に引き上げられた。米国は数値目標で義務づける仕組みが弱く、差別の禁止と合理的配慮(=個々の事情に応じた働き方の調整)を柱にしている。義務の形は違っても、働く人の割合が上向く点では共通する。制度の型より、現場の運用が成果を左右するという見方もできる。
在宅勤務の定着が、就業の入り口を広げた可能性
米国で比率が伸びた背景には、コロナ禍以降に在宅勤務が一般化したことがある。通勤が難しい人や、体調に波がある人にとって、出社を前提としない求人は大きな意味を持つ。実際、2020年以前の比率は30%台前半にとどまっていた。
さらに、採用市場が長く人手不足だった点も効いている。企業は応募者の幅を広げざるを得ず、障害を理由に門前払いする余裕がなくなった。つまり、善意だけでなく、人手不足という経済の力が雇用を押し上げたといえる。
景気が冷えたときに、どこまで維持できるか
今後の焦点は、景気が減速したときの動きだ。過去の不況では、障害者の雇用が先に削られ、回復も遅れる傾向があった。人手不足が弱まっても、在宅勤務や配慮の仕組みが残っていれば、比率は維持できる。今回の高止まりは、その試金石になる。
ニューロダイバーシティ人材への注目は、特に情報技術や品質検査の分野で強い。特性に合う仕事を切り出す動きが広がれば、障害の種類を問わず就業の幅は広がるだろう。
ビジネスへの影響
数字の上下より、採用の入り口を見直す
日本の企業が学べるのは、米国の数字そのものより、応募の入り口を広げた手法だ。在宅やフレックスを前提にした求人、仕事内容を細かく切り出した募集、面接での事前の配慮確認などは、すぐ取り入れられる。まず一つの職種で試し、定着率を半年追うとよい。
配慮の費用は、思われているより小さい
米国の調査では、職場での配慮の半数以上が追加費用ゼロで済むとされる。残りも、平均で数百ドル程度にとどまる例が多い。席の位置、連絡手段の文字化、作業手順書の整備といった工夫が中心だ。費用を理由に採用をためらう場合は、実際の見積もりを出して判断したい。
法定雇用率の達成を、定着の指標で補う
雇用率という数字は入口の指標にすぎない。意思決定者は、一年後の定着率、配置転換の回数、本人の満足度を併せて見るべきだ。特にニューロダイバーシティの視点では、得意な作業と業務の一致が成果を決める。人事任せにせず、現場の管理職が配慮の方法を学ぶ場を設けることが、結果として離職を減らす近道になる。